新規開拓の全体設計図

新規開拓の努力を最大化する4つのポイント

20%の優先事項が80%の成果を作るという法則をご存じでしょうか?

パレートの法則と呼ばれるものです。

パレートの法則

成果の上がっている会社や社員は、やるべきことに集中して最大の成果を上げています。
一方、成果の上がらない会社や社員は、毎日決められた仕事、やりやすい仕事を優先しがちです。そのため、時間をかけてやった気になっているのに、成果につながっていないことがよくあります。

これは、新規開拓においても同様です。

新規開拓において、投入した資源や時間、努力を効果的に成果に結びつけるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

1.行くべき相手とそうでない相手を見極める

2.アプローチ方法(プッシュ型営業・プル型営業)を使い分ける

3.相手に伝えるべきことを伝える

4.進める案件とそうでない案件を見極める

上記4つの勘所について、あなたはどう思われたでしょうか?

当たり前のことだと思われましたか?

私はこれまで、数えきれないほどの営業会議に参加してきました。
残念ながら、その会議で、上記の4点の一つでも、真剣に議論されている現場に立ち会ったことがありません。

大抵は、順番に商談の進捗や受注の見込が報告されるだけ。
マネージャーは受注の確度の高そうな案件をがんばるように指示するだけ。
毎週その繰り返しで、営業会議に2時間以上を費やすようなことが往々にして起こっています。

上記4つを明確にするだけで、営業会議はもっと生産性の高いものになります。

1.行くべき相手とそうでない相手を見極める

新規開拓で最初の壁は「誰に」営業するかという問題です。

ここでも、行くべき相手の優先順位があります。

なにも全く新しい関係をゼロから築くことだけが新規開拓ではありません。
あくまでも自社の既存のお客様に何らかの接点があるところから、拡大していくべきです。

そのためには、

①既存のお客様で、自社にとって優良なお客様に更に購入していただく

②既存のお客様に、他部署や他社をご紹介していただく

③自社にとって優良な既存客と同じ傾向を持つ新規のお客様にアプローチする

の順で考えます。

既存のお客様のフォローなど当たり前だと思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、営業を苦手とする会社や職種の場合、既存のお客様のフォローを十分にしていないケースが実際によくあります。まずは、これまでの既存のお客様は当然ながら、社員の机の中に眠っている名刺や過去のイベント来場者などのリストを掘り起し、丁寧に名寄せして、見込み客のリストを作成することから初めてください。

また、これもよくあるケースとして、営業会議などで「これまでのようにお客様を訪問しても、最近はまったく取引してもらえなくなった」というお声を耳にすることがございます。
お客様からの需要がなくなったので仕方ない、という言い訳が添えられたりします。

この場合、本当に「行くべき相手」に行っているかどうかを確認する必要があります。

果たして、ご自身にとって都合のよい「行きやすいお客様」に訪問してはいないでしょうか?

「行くべきお客様」とは、営業マンが「行きやすいお客様」ではなく、自社にとって優良なお客様でなくてはなりません。
すなわち、少しでも需要が見込めるお客様、ということです。

一般的に売上上位のお客様は優良なお客様ですが、購入頻度も重要な指標になります。

  • 1回だけのご利用なのか、継続して利用していただいているのか。
  • ご利用が伸びているのか、減っている傾向にあるのか。
  • 購入している商品・サービスに違いはあるのか。

そもそも、そうしたお客様の利用状況を把握した上で、営業しているでしょうか?

営業活動を成果に結びつけるためには、お客様の利用状況を把握し、「優良なお客様」が誰なのかをしっかり見極める必要があります。
それは、なにも難しいCRMシステムに高額な投資をするという意味ではありません。お客様の状況は、お客様に発行している請求書でも簡単に把握することができます。

営業というと、多くの社員は大変だというイメージを持っているかもしれません。
しかし、「行くべきお客様」のところに行くと、むしろお客様から感謝、歓迎されたりします。それは、社員のモチベーションを上げるのに実に効果的です。

2.アプローチ方法(プッシュ型営業・プル型営業)を使い分ける

お客様へのアプローチ方法は、以下のとおり、大きく2つに分けることができます。

①お客様に直接働きかけて販売する方法(訪問営業、電話営業、ダイレクトメール等)

②広告や販促活動を通じてお客様の需要を喚起して販売に結びつける方法
(ウェブ、セミナー、展示会、広告等)

①はプッシュ型営業、②はプル型営業と呼ばれています。

あなたの会社では、お客様の普段の行動に合わせて、適切なアプローチをしているでしょうか?お客様の普段の行動とは関係なく、”これまでうちの会社ではその方法でやってきたから”という理由だけで、従来の方法に固執していないでしょうか?

そもそも、あなたの会社では、各アプローチ方法にかけている営業・販促費、その結果得られた反応率・成約率、1件の成約の獲得コストを把握していますか?
弊社では初回のコンサルティングで、このような質問をしますが、それを把握し、分析している会社はほとんどありません。

営業・販促にかかる費用や、社員の時間や努力を効果的に成果に結びつけるためには、各媒体の役割と自社のリソースやお客様の状況によって、①と②を使い分けたり、組み合わせたりすることを考えます。
さらに、①や②の中の具体的な方法・媒体のどれを選択し投資するかも、アプローチしたいお客様の特性から考える必要があります。

それにより、戦略的に売れる仕組みを作ることができます。

例えば、①の訪問営業は、特定の商品・サービスにおいて高い利益率や売上、あるいは高確率での成約が見込まれるお客様に絞り込むのが効率的です。

営業の先任者がいない、営業マンの数が限られているという中小企業、取扱い商品・サービスが多く、営業マンの専門知識にばらつきがあるという企業には、訪問営業するお客様を絞込み、それ以外のお客様をウェブ等に誘導する施策をお勧めしています。

インターネットが普及した現在、お客様が何かを購入しようと思った際に、「まずウェブで目的の商品・サービスを調べる」という行動が当たり前になってきました。

そのため、ウェブ等に訪問したお客様にもご満足いただき、機会を取りこぼさないよう、情報を充実させる必要があります。新製品情報やイベント・セミナー情報はもとより、バックヤード発のプロフェッショナルな情報発信がBtoBには効果的です。

それによって、訪問営業先のお客様自らも、ウェブ等から情報を入手して納得し、交渉が円滑に進むという相乗効果も得られています。

弊社のクライアント様は、上記のようなプッシュ型営業とプル型営業を戦略的に展開したことにより、営業マンが有望な見込み客や既存顧客の対応に集中できるようになりました。そして、ウェブ経由では、これまで訪問していなかったお客様の別の部門からの引き合いが来たり、「御社はこんな商品も扱っていたのですね」というお客様からの引き合いが来るなど、相乗効果が得られています。

3.相手に伝えるべきことを伝える

相手に伝えるべきことを伝えているかどうかで、成約の可否が決まります。

特に、新規開拓では、初回面談が非常に重要、かつ最大のハードルで、そこで何を伝えるかによって、2回目以降の商談につながるか否かが決まります。

そして、伝えるべきことを伝えていれば、他社との価格競争にも巻き込まれることもないのです。

さて、あなたは日ごろ、営業先で何を伝えているでしょうか?
営業マンが営業先で伝えるべきことをしっかり指示できているでしょうか?

これまでも同じように伝えてきたから、という理由で、会社の概要、商品・サービスの機能や特徴などの説明、自社のこれまでの実績などを一方的に伝えていないでしょうか?

実は、営業先の担当者は、あなたの会社にも商品・サービスにもまったく興味はありません。

すでに、お客様自身がインターネットやあなたの同業他社から、商品・サービスの情報を入手しているかもしれません。すでに相手が知っている情報を、あなたが一生懸命話をしたとしても、相手は右から左へ聞き流しているでしょう。

そして、それに気づかずに、見積提示をしたら、単純に他の商品・サービスと比べられて値段をたたかれるだけです。

お客様が社内で検討するにあたって、必要な情報は以下の3つに集約されます。
特に新規開拓の場合、以下のポイントをはずすと2回目以降のアポイントがとれない場合もあります。

①うちの同業他社はどうしているのか

②その会社を選ぶ理由は

③それをするとうちは儲かるのか

営業先であなたは今何を伝えていますか?今一度しっかり確認してみてください。

お客様に何を伝えるべきかについては、「競合と差別化し価格競争にならないための3ステップ・アプローチ」のシリーズで、具体的なノウハウを公開してします。自社の現状を確認したい、改善したいとお考えの社長は、ぜひご一読ください。

4.進める案件とそうでない案件を見極める

営業の専任者がいない、営業マンの数が限られているという中小企業様にとって、「本当に受注の可能性のある商談はどれなのか」を見極めることが重要です。

そこに限られたリソースを集中するという割り切りが、営業の生産性を高めるポイントになります。

そのためには、

  • 「お客様は買ってくれそうか」
  • 「自社として受注したい内容か」

の2つの視点から、取引を進めるのか、撤退するのかを判断する必要があります。

毎週の営業会議は、特にその判断をすることを目的の一つとすべきです。

例えば、お客様に他社も入り込んでいて、相当な値引きをしないといけないような案件は、採算度外視で実績づくりを優先するのではなく、撤退した方が賢明です。

一方で、当初は利益が薄いと思われても、お客様と共に新しい市場を開拓していける見通しが高い案件は、思い切って進めるのも戦略の一つです。

また、お客様の社内でなかなか話がまとまらない案件で、自社の打ち手があるものについては方策を立て、打ち手がないものについては一旦交渉を停止する判断もあるでしょう。

限られたリソースで、新規開拓の成果を最大化するためには、自社で「お客様を選ぶ」ということもとても重要なことなのです。

 

以上、このブログ記事では、「新規開拓の努力を最大成果に結びつけるための全体設計図」と題して、新規開拓を戦略的に進めていくための全体マップをご紹介しました。

今後、この設計図に従って新規開拓を戦略的に進めていくために、それぞれのステップでより具体的に何を実践したらいいのか、についてご紹介していきます。どうぞ、楽しみにしていてください。

まとめ

  1. 新規開拓においても、20%の優先事項が80%の成果をつくる
  2. 営業のリソースが限られる中小企業においては、常に優先事項を考え、そこにリソースを集中させることが重要
  3. 新規開拓で考えるべき優先事項は、大きく以下の4つのポイントに集約される
    ・行くべき相手とそうでない相手を見極める
    ・アプローチ方法(プッシュ型営業・プル型営業)を使い分ける
    ・相手に伝えるべきことを伝える
    ・進める案件とそうでない案件を見極める
  4. 上記の4つそれぞれに、さらに20%の優先事項が存在する