5STEP

社長の中に潜んでいる縮小均衡のスパイラル

なぜ、弊社が「新規開拓」のコンサルティングに力を入れているのか。

その理由は、会社を成長させられない社長は、そもそも社員から信頼を得ることができないからです。なぜならば、社員の生活を保障し、夢を与えることができないからです。社長が社員に夢を与え、会社を成長させるためには、「正しい」やり方で、新規開拓に取り組む必要があります。

既存顧客は、自然体で年間10%-20%は減少すると言われています。

会社の売上を維持増大し、成長させるために、新規開拓は必須の営みです。

したがって、本来は、優先順位が高いはずです。

そう頭の中ではわかっているのもの、実際は、新規開拓よりも既存のお客様の対応や目先の業務を最優先してしまっていませんか?

私がこれまでお付き合いしてきた会社を見ると、既存のお客様に依存し、新規開拓が上手くいかない会社は、経営者や幹部の方の以下のような考え方によるところが大きく影響しています。

①短期的な売上だけを最優先する

新規開拓は成果がでるのに時間がかかります。
それゆえ、既存のお客様からの短期的な売上を最優先してしまいます。

あるいは、新規開拓にも短期的な成果を求めてしまい、会社として戦略的にじっくりと取り組むことをしていません。

②新規開拓を「コスト」と捉える

新規開拓の取り組みは、当然ながら既存のお客様の対応よりも稼働がかかります。
短期的な利益だけを追求する会社では、それを「コスト」と捉えてしまいます。
社員の評価も、短期的な売上評価になっています。
そのため、社員も既存のお客様との関係を最優先します。

③新規開拓を「リスク」と捉える

新規開拓の取り組みは、将来への投資です。
既存のお客様との取引が未来永劫続くわけではありません。
しかし、現時点で売上がたっているから新規開拓は必要ないと考えてしまいます。
そして、新規開拓に挑戦することを「リスク」と捉えてしまいます。

④新しいお客様に対する不安や恐れがある

新規開拓には、お客様に受け入れてもらえないのではないかという不安・恐れが伴います。
結局、楽な日常業務に流されて、新規開拓を避けてしまいます。

⑤新規開拓と既存のお客様フォローを同じと考えている

御用聞き営業や単なる商品説明型営業など、かつての営業スタイルが通用しなくなった今、新規開拓を成功させるためには、会社として戦略的に取り組まなくてはいけません。

新規開拓と既存のお客様フォローは分けて考えた方がよいです。

しかし、新規開拓も既存のお客様フォローも一緒にして、ただ社員に「売上上げろ」とはっぱをかけるだけでは、新規開拓はいつまでたっても成果に結び付きません。

残念ながら、こうした考えの会社の多くが、既存のお客様からの取引の減少と値下げ要請によって、現在、経営的に苦境に立たされています。

そうなる前に、社長として、先んじて事前の策をとらなくてはなりません。
ここでは、新規開拓について、社長の仕事の優先順位という観点で整理します。

緊急度と重要度で仕事の優先順位をつける

仕事の優先順位を「緊急度」と「重要度」で分けて考えます。

  • 「緊急」とは、今すぐに対応しなければならないことです。
  • 「重要」とは、目的・目標の達成のために必要なことです。

「緊急度」と「重要度」をマトリクスで整理すると、

Ⅰ.重要で緊急なこと
Ⅱ.重要だが緊急ではないこと
Ⅲ.緊急だが重要ではないこと
Ⅳ.重要でも緊急でもないこと

この4つの領域に整理することができます。

その4つの領域それぞれに、会社の業務を分類すると、下図のとおりになります。

社長の優先事項

この4つの領域の中で、実は最も重要なのが「Ⅱ.重要だが緊急でない」領域です。
会社の業務でいうならば、「長期的な売上・利益拡大に関する取り組み」になります。

すなわち、将来困らないための事前の策ということです。
少し考えればわかることですが、「Ⅰ.重要で緊急なこと(長期的な売上・利益拡大に関する取り組み)」を行ってきたかどうかが、今の結果(目の前の売上・利益)をつくっているのです。

「Ⅱ.重要だが緊急ではないこと」の領域こそがまさに社長が最優先で取り組まなくてはならないことです。社長がリーダーシップをとってこの領域を進めなくてはなりません。社員は「Ⅰ.重要で緊急なこと」すなわち「短期的な売上・利益安定に関する取り組み」で日々忙殺されているからです。そして、新規開拓は、まさにこの領域に整理されます。

しかし、社長とお話すると、実に多くの方から、「わかってはいるけど、忙しくてね…」という言葉が返ってきます。毎日やるべき仕事で忙殺されている状況は、私も他人事ではないので、よく理解できます。中小企業の社長はことさら毎日に追われていることでしょう。

そして、私たちは、ついつい「緊急」という基準で行動してしまいがちです。なぜなら、「緊急」なことは、いつでも向こうから働きかけがありますが、「重要」なことが私たちに直接働きかけることがないからです。

それゆえ、「Ⅱ.重要だが緊急でないこと」に分類されることを実行するためには、私たち自身が、強い意志を持って実行しなければ、成し遂げることができません。

そこで、「Ⅱ.重要だが緊急でないこと」に取り組むためには、社長が「やる!」と覚悟を決めると共に、やるべきこととやらないことの整理と、社長自身の時間管理が重要になります。

会社を成長させる社長の時間管理術とは?

では、社長が「Ⅱ.重要だが緊急でない」ことに取り組むためには、どのようにしたらよいのでしょうか。ここでは新規開拓の切り口でお話します。

弊社では、新規開拓の営業・マーケティングの仕組み化に取り組む前に、以下の5つについて、今の会社の改善点を社長と共に洗い出し、改善することからコンサルティングを行っています。

その1:4つの領域で社長の仕事を書き出してみる

まずは、日常の時間の使い方を4つの領域で書き出してみることをお勧めします。

「Ⅱ.重要だが緊急でないこと」ですべきことを明確にし、それ以外にどのような案件で時間がとられているのかを把握します。

それをすることで、毎日の過ごし方がわかり、何をして何をしないかが明確になります。

「Ⅰ.重要で緊急なこと(長期的な売上・利益拡大に関する取り組み)」を具体的に書き出すことは、将来どういう会社にしたいかを考えることにつながります。それは、社長にとってだけでなく、その会社の将来にとってとても重要なことです。

その2:「Ⅰ.重要で緊急なこと」をできるだけ権限委譲する

「Ⅰ.重要で緊急なこと」、すなわち、短期的な売上・利益安定につながる取り組み=日常のルーチンの中で社員に権限委譲できることを整理します。

誰にどのように権限委譲し、どのような方法で管理下におくかを考えた上で、できるだけ社員に権限委譲するようにします。この作業をすることで、日常業務のマネジメントを見直す機会になります。

具体的には、日常業務で発生する意思決定において、判断基準、コミュニケーションルート、最終判断までの期間が明確か、適切かを見直します。
それを検討することが、スムーズに権限委譲するための事前の策にもなります。

その3:「Ⅲ.緊急だが重要ではない」時間の一部を「Ⅱ.重要だが緊急でない」時間に振り分ける

「Ⅳ.重要でも緊急でもない」時間は言うまでもありません。すべて「Ⅱ.重要だが緊急でない」時間に割り当てます。そして、「Ⅲ.緊急だが重要ではない」時間のうち30分でも「Ⅱ.重要だが緊急でない」時間に振り分けられないかを考えます。

この時間整理は実に重要です。
社長ご自身の時間管理という観点だけでなく、社員に対して「Ⅲ.緊急だが重要ではない」業務を増やすようなマネジメントをしていないかという観点でも整理してください。

社員が「Ⅲ.緊急だが重要ではないこと」(例えば、多くの会議、多くの報告業務)や「Ⅳ.重要でも緊急でもないこと」(無計画・無目的なあらゆる活動等)に忙殺されている会社のマネジメントでは、社長がいくら「Ⅱ.重要だが緊急でない」取り組みをしようとしても、協力が得られず、社長が孤立してしまいます。なぜなら、社員が毎日一生懸命取り組んでいるにもかかわらず、忙しいばかりで業績や改善につながらず、社員の不満が鬱積しているからです。

新規開拓に取り組むにあたっては、不合理なマネジメントを見直し、社員の不満を取り除くことから着手しなければ、結果につなげることはできません。

このようにして、社長ご自身が、最優先事項である長期的な売上・利益拡大に取り組む時間(ここでは新規開拓にフォーカスします)を確保すると共に、社員に協力が得られるよう現在の業務を整理してください。

その4:新規開拓の仕組みづくりに短期集中で取り組む

ここが最も重要です。

社長が新規開拓を「やる!」と覚悟を決め、短期集中で取り組む体制をつくります。

プロジェクト化して、毎週定例を実施するなどの計画を最初から組み込むことをお勧めします。その時に大切なことは、

  • なぜそれをする必要があるのか
  • それによっていつまでにどのような成果を手に入れるのか
  • やらないとどうなるのか

をしっかり社員に理解させることです。

その際に社内のリソースで不十分ならば、外部のアウトソーシングを一時的に、上手に活用するのも社長の手腕です。

そして、できるだけ早期に、小さい成功体験でいいので、目に見える成果を作り出します。それが、社員をやる気にさせ、絵に描いた餅に終わらせないための秘訣です。

その5:新規開拓をルーチンとして「Ⅰ.重要で緊急なこと」に組み込む

新規開拓の仕組み化ができ、成果を上げることができたら、それを「Ⅰ.重要で緊急なこと」にルーチンとして組み込みます。

PDCA【Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)】

これを組織に委ね、社長はそれが上手くいっているか、どこを改善すべきか、PDCAの過程をチェックさえすればよいのです。
こうして、社長は、次の「Ⅱ.重要だが緊急でない」案件に着手することが可能になります。

最後に、新規の顧客開拓や事業開発に絶対的に必須なのが、「マーケティング」のスキルです。弊社が新規開拓のマーケティングを支援しているのは、社長に会社の成長と社員の幸せをもたらしていただくお手伝いをしたいからに他なりません。

まとめ

  1. 新規開拓は、会社の売上を維持増大し、成長させるために、社長が最優先で取り組むべきこと。
  2. 新規開拓に最優先で取り組むためには、①社長が「やる!」と覚悟を決め、②社長自身の時間管理を徹底することから始める。
  3. 「緊急度」と「重要度」の2軸で業務を整理すると時間の使い方が明確にできる。
  4. 社長が新規開拓に取り組む時間を捻出するためには、①日常のルーチンをできるだけ社員に権限委譲すること、②重要ではないことをしている時間を新規開拓に振り分けること。
  5. 新規開拓の仕組みづくりを成功させるコツは、短期集中で取り組み、できるだけ早期に、目に見える成果を作り出すこと。